地方選挙は、日本の方向性を議論するものではないとわかっているものの、今回の討論会でも、国政部分の質疑応答が一番、興味深い。

都知事選候補者の集まった討論会が行われた。

前回の都知事選では、宇都宮氏しか、参加の意思表示がなく、結局、討論会がなかったという。今回は、候補者間の討論会が実現し、立候補者の政治的手腕や心を知る手段が提供されたのは良かったと思う。

今はまだ、選挙期間中でないために、選挙法にふれないのだろう。日本の選挙もデベートのスキルが求められる時代になるかもしれない。

そうなると、言葉少ない(何が本音かわからない)政治家は、不利になる時代がくるだろう。

宇都宮氏が立候補を下りず、戦うようだ。
野党も与党も、一本化ができず、ますます、混沌としているが、何といっても、東京は特別だ。

実際にトップに君臨する人を、一般人が選ぶことのできる直接選挙法の知事選は、国政の代理戦争になる。

国政への直接選挙が望めない日本では、首都の東京の知事選こそ、才能のある候補者と、知性あふれる選挙民の組み合わせになることが期待できる。

自民公明の公認候補の増田氏が敗れるようなことになれば、国政政治家の意識がかなり変わるのではないかと思う。

地方は、本来、政党の役割が低いはずだが、現実は、地方の議会は、自民党が仕切っており、知らない間に自民党で決めているということが多いと思う。
野党がどんなに正論を吐いても、決して配慮されない。
共産党が医療政策を示しても、自民党は、はなから相手にしない。
しかし、この野党からの正論が、後の自民党政策の一部にとりいれられることがあったりもする。

地方では、そうしたドンが決めるような地方政治のやり方が残っている。
だからこそ、東京ではドン的な手法が、真っ先に変わっていって欲しいと思う。

本来、地方選挙は、日本の方向性を議論するものではないとわかっているものの、今回の討論会でも、国政部分の質疑応答が一番、興味深い。

候補者たちの討論で、日本の憲法問題の重大さが理解しやすくなるのだ。

地方的な防災問題とかも大事と思うが、どの位のお金をかけてどう整備するのかは、起案すること自体が難しい。
実際に起きる災害はシナリオがない。だから、そこの議論をしても煮詰まらない。

しかし、地方を離れ国政問題になることで、候補者の顔が見えてくる。問題点が浮き彫りになる。

候補者各氏の答えた内容のうち、憲法問題が一番、焦点が見えて興味を引いた。この問題では、鳥越氏が雄弁に語った。

鳥越氏 「私は、安倍政権は戦後最悪の内閣だと思っています。なぜならば、選挙のときにまったく公約になかった特定秘密保護法を突然、国民の反対を押し切って強行し、集団的自衛権も国民に問うこともなく閣議で決定し、安保法制も国民の過半数が反対している中で強行採決しました。そして今度は憲法に手をつける。その中で特に私が憂えているのは、緊急事態条項です。自民党憲法改正草案に載っています。事態が発生したときは、総理大臣は憲法を停止して政令を別に作ることができると書いてあります。これはかつてヒトラーがやったことです。それを日本でやっていいことでしょうか」

 増田氏「憲法の問題。今問われているのは都知事選ですね。一つは都知事選と憲法の問題をそこに持ち込んでくることはどうなのかと。国政の問題と地方の問題は峻別して考えていくことが必要だと思います。しかし政治家として憲法認識はどうなのかということですから、憲法については、今の憲法の精神を十分生かす、もしそれを変えていくということであれば、改憲規定もあることですから、そういう中で十分に議論していく必要があると思います」

増田氏の答えは、最初、憲法の話題そのものを否定したが、しゃべっている途中から、増田氏は考え直した。(何か言わないと選挙に不利だと判断して)コメントを続けたようだ。こうしたところに、官僚的な態度がにじみ出ると思う。
エネルギー問題についても、増田氏の答えは優等生的で、結局どうしたいのか、わからない。
しかし、増田氏のこうした安定性に、票を入れる人もいれるのだろう。なんといっても自公公認だ。政党力がどの位に強力なのかが、選挙で示されることになる。

宇都宮氏「安倍政権がやってきた特定秘密保護は、国民の知る権利、報道の自由を侵害している憲法違反の法律だと思っています。安保法制については明確に憲法9条に違反していると、多くの憲法学者も指摘しております。海外で戦争できる国づくりをやる第一歩だと思っています。今度、憲法改悪の可能性がありますが、自民党の憲法改正草案は極めて危険な9条改正をして緊急事態条項をつくる、基本的人権を大幅に制限する内容になっています。」

宇都宮氏のこの発言を聞いても、宇都宮氏は普段から、問題意識が高いことが良くわかる。彼は、こうした分野が一番得意なのではないか?

しかし、宇都宮氏が知事になったら、役人を動かせる有能な知事となれるかは、又、別問題なのだろうな。

小池氏「第3の矢の中の一丁目一番地が女性の輝く社会づくりというのであるならば、私はそれを東京の場で実現していきたいと思っています」

小池氏が、このように女性問題をあまり前面に押し出すのは、案外不利なのではないかと心配だ。男性たちのジェラシーを買う。

小池氏の冒頭解散もすごい政策と思うが、これが改革的と功を奏するかもしれない。
都政のドン的な政治手法に対して、冒頭解散をちらつかせることはインパクトはあるだろうが、ここは未知だ。
彼女は、都議会とはぎすぎすになるかもしれない。

しかし、都の役人の上に君臨する人になるのだから、あまり役人に対してうるさいことを言わなさそうな彼女が、知事として、ご当主的な雰囲気を醸し出す人になれそうな気がしている。


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コメント

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学とみ子
> 白鷹隼さん
コメントありがとうございます。女性候補者への支持もありがとう。

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今日は。お邪魔致します。

宇都宮氏は残念ながら下りてしまわれましたね。

記事の最後「知事として、ご当主的な雰囲気を醸し出す人になれそうな気がしている。」にナイス!でございます。

もしも2020年の東京オリンピックを良しとするならば、それを迎えるのが女性都知事である事は良しなのでございます。
尤も、選挙民が其の様な論理を持ち得るのかは知りませぬが。
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