川島なお美や平尾氏の胆管がん手術が難しいと書かれていたが、胆管部分は、画像診断が難しく、破壊的に進行していることが明らかにならないと、がんと診断できない。
これは、前ブログで書いた文章であるが、がんの早期発見はそもそも難しいものである。
今は、大腸がん検診と銘打って、便の潜血反応(消化管内で血液が出ているかを調べる)検査がある。便の潜血反応検査を、大腸がん検査とうたっているものの、実際には、便の潜血反応が陽性でも、大腸がんがある可能性は高くない。
便の潜血反応検査が陽性で、大腸内視鏡でつらい思いをしても、がんは発見できない事が多い(つまり、がんはない)。
大腸内視鏡の時、ポリープを指摘され、ポリープ除去をする人は少なくないが、取らなければがんになるものではない。がんになることがあるかも・・・との憶測で、ポリープを取るのである。
大腸ポリープは、検査する人の目で、周りの正常粘膜と変化が少ない良性と判断できる場合が多いが、中には、この先が心配になるような悪そうなものもあり、ポリープの顔つきはさまざまである。
しかも、あくまで、術者が目で見て判断しているに過ぎない。
将来どうなるかについてはわからないし、その時点での憶測的にすぎない。
腹部エコー検査などで、胆石などの陰があっても、すぐ、手術をするわけではない。
胆管を閉塞して黄疸がでるようでは、胆管に穴があいたりして腹膜炎が起きる。
こうなると、死ぬかも・・であるので、炎症が起きたりすれば胆石除去の選択肢が出てくる。
医師が、がんの可能性を予測すると、逆走性の胆管造影という検査をする。
これは入院して行う侵襲的検査(体を痛めるつらい検査)で、有用な検査ではあるが、これとて、単に影を見ているにすぎない。
この検査でがんの可能性が高いとなると、次のステップに進む(さらに大変なことになる)。
「がんでなくても、石を持っているのはいやだからとってください!」と患者さんが言っても、医師は慎重になると思う。
なぜなら、手術は、100%安全ではないからである。
手術でなくとも、検査ですら、とんでもないことが起こり、緊急手術になることもある。
本日も、新婚カップルの女性の堕胎手術での死亡事件が、訴訟になったとニュースで紹介されていた。
堕胎手術で死ぬなんて!と思う人がいると思うが、堕胎手術とて100%安全ということはありえない。
めったに死なない手術なのに、死亡したのはけしからん!では、訴訟にはならない。
だから、今回は、そこは争点でなく、資格のない医師が手術をしたことが争点として問われているようだ。
この場合の資格とは優性保護法指定医のことである。つまり、この裁判では、手術した医師が、優性保護法申請済みの医師か、そうでないのかが問われるようだ。
この法律は昭和23年とかなり昔にでき、医師会が指定するしくみになっているようである。
産婦人科学会による専門医認定がらみの資格として、手術経験は審査の対象のようではあるが、個々の医師の技能までは問えない。
優性保護法の申請済みの医師は経験を積んでいるかもしれないが、すごく上手か?とまでは、審査していない。
出産時の予期せぬ緊急出来事であれば、どう対処するかなどで、追い詰めらた医師の技量が関連するかもしれないが、一般的な堕胎手術では、そこまで手術医の腕による差はないと思う。
大学病院では、新米の医師の練習台になるかもしれないから、かかりたくないとかの話を聞く。
又、5月からしばらくは大学病院には行かないという人もいる。
その頃は、医者の卵たちが、診療を始める期間であるからだという。
堕胎での死亡は、手術を受けた側(患者側)の特殊な生体反応の可能性を考える必要がある。
99%以上の人が耐えられる体への侵襲が命取りとなり、実際に死んでしまう人がいるのである。
体に人工的なメスを加えることで、その後、体に何が起きてくるのか?
そうしたきわめて専門的なことを、裁判で争っては不毛だ。
今後の裁判で、そうしたことが問われるようになると、裁判は大変だろう。
最終判断は医師でない裁判官がしたら、判断の間違いが起きる。
個別性の高い予期不能な人の体を扱う以上、不特定要素は常につきまとう。
医師が言い方は、「多くの場合は問題はなく、死亡につながることは少ない!」とか、「ほぼ、安全かと・・」などなど、ほぼとか、およそとかの前置詞的な条件がつきものだ。
低確率で起きる特殊な生体反応にこだわりすぎたら、医療はできなくなる。
今日、自動車で出かけても、交通事故で死ぬことはないと人は思う。
今日、飛行機に乗って旅行に出かけても、予定どおりに帰るつもりと人は思う。
それが裏切られたからといって、飛行機や車の無い社会にはならないのである。
確率が低い出来事を考慮したら、世の中が成り立たない。
お互い、許容しあうことで人間社会が成り立っている。
コメント
No title
受診者さんが、診療機関に対して「ここに来て良かった」「ここに来て、役に立った」と思ってもらうことが大事ですよね。患者満足度を上げる職種は、いろいろだと思います。
2017/01/25 URL 編集
No title
医師と技師とは「命」を境にして論理の展開が全く異なると言うのが経験の教えるところでございました。
異なって当然であると思っておりましたが。
技術の世界に職人がいるのも、医療の世界に職人技の医師がいるのも、実は、人のしている事は基本的には皆同じなのかも知れませぬ。
などと考えたり致しました。
また、「確率」と言う数学的な観点では、と言うよりも、科学と言う観点からすれば、物の見方と言うのはみな同じなのかも知れませぬ。
「命」とは別の世界と思っていた技術屋の世界にも、最近は「生命科学」と称する分野が入り込んで参りまして、「命」にかかわる技術開発が進めれれていることにも関係するのかも知れませぬ。
個人的な感想としては、医療こそが論理的でなくとも「命」に最も近いものであって欲しいと思っているのでございますが・・・
2017/01/22 URL 編集