エストロゲンは、女性のPTSDを増強させる可能性がある。

2月27日、ネイチャーのPTSD(post-traumatic stress disorder;直訳は外傷後ストレス症候群、日本語では心的という文字がつくことが多いです)について書きました。この時は、英文サマリーだけの情報でしたが、本日、本文を入手しましたので紹介します。
 
人生でうけるイベントにおいて、ストレスの感じ方は、男女で異なります。DSM-IV(診断基準)を用いて診断したPTSDの女性では、下垂体性アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)が高いという結果が得られました。その受容体の遺伝子異常は、女性だけにみられる特徴であるというサマリーでした。

この論文の一番、注目すべきところは、恐怖反応に、エストロゲンが関与しているという点ではないでしょうか?従来、エストロゲンは女性のQOLを改善し、脳機能も高めると期待されました。それが、WHI試験で否定され、さらに中枢神経においては、女性の恐怖反応の火付け役として、機能していることが示されたことは、注目されます。昨日も書きましたが、今後もエストロゲンは右にぶれ、左にぶれて、その機能が解明されていくと思います。
この論文の引用論文の1番目は、Miyata さんで、日本人関連です。彼は、1989年に、PACAPを視床下部から発見しました。
 
血漿中のPACAPレベルの高い群と、低い群にわけて、PTSDスコアを比較してみると、男性では、両群に差がないが、女性ではPACAPレベルの高い群で、PTSDスコアが高い結果でした。女性では、血中PACAP38のレベルが高いと、PTSD症状が強くなります。PTSD症状を持つ人を対象に、いろいろな恐怖評価テスト(人をおどかしたり、思い出させたりして恐怖の程度を評価するテスト)を行うと、男性では、PACAPレベルの高い、低いによる、恐怖レベルに違いはないが、女性では、PCAPの高い人で、数倍の単位で恐怖のスコアが高くなりました。さらに、刺激回数を増やしていくと、PTSDでない人は、恐怖刺激に慣れてくるのに対し、PTSDの人では、恐怖スコアが減少せず、慣れるという現象がおきてきませんでした。(図を参照,理解のためのだいたいの模式図です。横軸は、恐怖テストの回数で、縦軸は、恐怖の程度です)。
さらに、PTSDの女性では、安全な刺激の時にも、恐怖反応が増幅しました。どのような刺激でも、恐怖を感じるように、条件付けがされていました。
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女性503名、男性「295名の遺伝子を検討し、ADCYAP1R1遺伝子の中の、30個のスニップを見出しましたが、そのうち、PTSDと関係するのは、ADCYAP1R1遺伝子のイントロンに存在するrs2267735の部位の塩基が、C(シトシン)か、G(グアニン)のスニップ(塩基の入れ替わり)でした。この部分はエストロゲン応答エレメントとしてすでに決定された部分で、この部分が、CCになっている人(n=309)では、CG(n=353),GG(n=101)の人にくらべて、PTSD の症状が強く、易興奮性、驚き反応、恐怖反応などのスコアが高くなりました。CCの型を持つ女性は、PTSDの症状が強いだけでなく、環境を暗くするなどの評価項目にも、強く反応する傾向がありました。
 
(注;論文には、実際の手技はのっていません)
 
男性では、この部分のスニップは、PTSDの症状とは、関係しませんでした。さらに、男性のPACAPレベルは、恐怖評価テストにおいて、スコアの高い群と、低い群で、PACAPレベルに差がありませんでした。
PACAP血中濃度との関係は、他の統合失調症、アルツハイマー病、そううつ病、薬物中毒ではみられませんでした。
すでに調査したヨーロッパ人2700人、アフリカ系アメリカ人2000人においては、この部分のスニップは、他の精神疾患、アルツハイマー病、そううつ病では検出されず、恐怖反応テストとの関係もありませんでした。
 
次に動物実験です。マウスの扁桃体を摘出して、ADCYAP1RメッセンジャーRNAを測定しました。ショックを与えると、ADCYAP1RメッセンジャーRNAが増加するのを確かめました。
 
マウス脳の分界条床核におけるADCYAP1RメッセンジャーRNA量が、エストロゲンにより影響をうけるかどうかを調べました。メスマウスの卵巣を摘出し、エストロゲンをインプラント内に埋め込む群と、コントロール物質を埋め込む群で比較しました。エストロゲンインプラントを埋め込んだ群で、ADCYAP1RメッセンジャーRNAが増加しました。
注;分界条床核、Bet nucleus of stria terminalis視床にある神経核)
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