STAP事件が起きた背景も、未知なるものを扱う研究だからこそ起きた悲劇を象徴していると思います。

本日の午前中に、NHKで“人体ネットワークの会話”というシリーズ番組の紹介をしていました。
http://www.nhk.or.jp/kenko/special/jintai/sp_2.html
健康戦略の大転換と銘打った番組のようです。

これは再放送のようですが、司会はなんと、山中先生とタモリだったんですね。

タモリは当然ながら絶妙の司会ですが、山中先生の語りも本当にじょうずですね。山中先生は、声も歯切れも良くて、話の内容も完成されていて、彼のマルチ才能ぶりが発揮されています。

山中先生のイメージでは、医学は10%位解明されたとおしゃっていました。
しかし、山中先生は、二人にひとりががんになり、三人にひとりががんで死ぬとおしゃったのは、統計数値をふまえているにしても違和感を感じました。

研究者として当然のこととして、山中先生は、NHK番組を通じて、日本人の関心を科学分野に集めたいとの意図があります。その結果、ややおおげさな言葉を使っていると感じました。

がんの頻度に関しては、国立がんセンターがそのように言っているのですが、がんセンターの研究者たちには、税金や競争的資金を集めたいとの思惑があります。

つまり、税金や産業資金が動くため、学者の思惑は時に過剰となり危険です。
行き過ぎた情報が伝えられたり、未知のことが解明された知識かのように伝えられるという意味で、情報としての危険にはらむと言えます。
時には、科学者や医学者の大風呂敷が披露されるという点での危険もあります。

体内ネットワークとは、人類に大筋で共通にあるとはいえ、きわめて個人差の大きなものであり、単純には語れません。しかし、一般向け番組にはそうした視点が抜けてしまうのです。

つまり、何に視点をあてるかは、情報を与える科学者たちの派閥や思惑が大きな影響を持つということになります。
STAP事件では、ねつ造の学者たちが、NHKに多くの情報を与えたのです。

ある科学者が、自身の研究に沿ったストリーを過信してしまってマスコミを迷わせることがあります。
そして、ライバル学者が声をあげて、その理論に反対します。
潰せ!潰された!のライバル間の競争があるのです。

STAP事件が起きた背景も、未知なるものを扱う研究だからこそ起きた悲劇を象徴していると思います。

このNHK番組で語られた医学的内容については納得できますが、やはり気になるのは、人体を単純化しすぎているという点でした。

たとえば、長年、間接リウマチで苦しんでいた女性が登場し、TNFアルファモノクローナル抗体で劇的に改善したとの内容が放映されました。

映像からみる限り、彼女のリウマチは重症なようで、薬が奏功した例だと思います。
TNFアルファモノクローナル抗体は、それこそ、この番組の核である体内ネットワークを、人工的に変化させる薬です。

しかし、薬はリウマチ病変以外にもさまざまな作用があり、体内ネットワークのバランスを崩します。たとえば、TNFアルファを抑えてしまうことにより、感染症に対して免疫が弱まり、それまでに患者が体内に抱えていた感染症が悪化して命取りになることがあります。
高齢者で起きやすいですが、結核やB型肝炎が悪化してしまうことがあります。

しかし、彼女のようにリウマチが重症であり、他の人体機能は正常である若い女性であれば、治療と病気の天秤の上からも、医師は新薬の選択に躊躇は無いでしょう。

山中先生は元整形外科医で研修医をしていて、リウマチ患者さんの治療に限界を感じ、研究の道に入ったと言っていました。そして、その後に開発された抗体治療の効果に驚いたそうです。

今や、その後の医学の発展で、抗体療法はがん治療にも応用され、大変なお金を生む産業になっています。TNFアルファモノクローナル抗体はそうしたさきがけになった薬でした。

TNFアルファモノクローナル抗体を早く使えば使うほど、効果は高いとされています。
しかし、女性は10人に1人、年齢が進むと手に限局して関節が少し曲がってしまう現象が起きます。その後、多くの人では関節破壊が抑制され、進行が止まるか、ゆっくりになります。

しかし、そこから、さらなる変化が起きる女性がいます。
一方で、リウマチと呼ばれる病気は、小児期から重症化したり、肺や心臓にダメージを起こす全身型があります。
つまり、病気には大きな個人差があります。病気の背景となる免疫機能に個人差があるからです。すばらしい特効薬は、軽症で経過するリウマチにも使われるようになるのです。

リウマチ薬の光と影です。
あまり臨床経験がない医師では、失敗した経験がないので、薬を早期に使うようになります。もちろん、医師は教科書的な注意事項は沢山知っているし、学会でも議論はされています。しかし、医師は、身近にとんでもなくなっていく患者さんを知っているか、いないかは影響します。
医師自身の性格によっても、治療選択の判断が左右されます。

患者さんたちは、独自の患者ネットワークがあり、治療情報が交換されています。そうした情報交換の中で、TNFアルファモノクローナル抗体を治療に使って、とんでもなくなってしまう仲間たちを知っています。時には亡くなってしまった仲間の情報を持っています。
そして、それを治療医でない別の医師に話すのです。

番組の中では、がん細胞のだすエクソソームという物質が紹介されていました。そして、3年後にがん予知で実用化をめざすそうです。
ここにも、医学知識の単純化の弊害を感じます。

今でも、がんが早期発見できると謳われている検査があります。しかし、その検査の不十分な予期能を正しく理解している人は少ないです。
利用者は、そうした検査限界についての情報がないまま がん健診の結果に不安を感じて苦しみます。
そして、産業資金が動いていきます。
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