長崎・広島の人たちを、40年間にわたり、固形がんの発症を観察した研究があります。

テレビでは、正しい放射能知識と言いますが、微量-少量の放射線の人体への影響を、正しく評価できる人は、世界中にいないと思います。だから、皆、研究者は言うことが違います。人類は、正解を持たないと考えると良いでしょう。過去の事例をよく、勉強することが、役に立つと思います。論文の表現は、難しいものですが、少しづつ勉強していきましょう。
 
1昨日、チェルノブイリの大量被ばく事故のデータを書きました。今回は、日本の原爆の時の調査を紹介します。
 
2007年の論文Radiat Res. 2007ですが、論文の全文は有料なので、代替として無料のサマリーを、紹介します。サマリーしか入手できない疫学研究の場合は、方法論の情報がいまひとつ不明です。戦後の混乱の中、被ばく放射線量のデータの採取と評価には、限界があったと思いますが、長崎・広島の居住者における、被ばく関連の学術調査です。
 
研究調査の方法は、コホート集団(コホートは小隊と言う意味)とは、いろいろな条件の人をあつめて集団をつくり、その集団に属する個々の人の病気を追跡していくものです。今回のコホート集団は、LSS研究と呼ばれています。被ばく時の諸条件別に、1998年まで、約40年間にわたり、集団に属する人々の固形がんの発症の経過を見ました、そして異なる諸条件の群ごとに、相対的ながんの発症率を比較したものです。
 
長崎・広島の被爆者のコホート集団105,427 人を追跡しました。この地域に住む人たちの、条件別(男女、年齢、被ばく量など)に、固形がん発症率を比較しました。
1958年にから1998年までの間、コホート集団の人々に、固形がんは、17448人に発症しました。
放射線 0.005 Gy以上の内部被ばくした人のうち、850 (約 11%) が放射線関連がんと推定されました。放射線関連がんは、若年者に多くみられました。

0から2-Gy の被ばく範囲の人では、用量依存的にがんが多く発症しました。被ばく量が増えるとがん発症が増加し、その関係は直線的でした。0.15 Gyより少ない被ばく量の人でも、用量依存的な関連がありました(多く浴びた人に多くがんが出た)。
 
被爆後30年経過した70歳の人では、男性では1Gy多く浴びたごとに。35% 多くがんが発症しました。(90%信頼区間 CI 28%から43%)、一方、女性では、1Gyあたり58% (信頼区間43%から69%) でした。
 
人々の年齢が高くなると、被ばく線量と発がんとの関連がうすくなり、10年間ごとに、17% (90% 信頼区間CI 7%; 25%) 相対的ながんの発症が低下しました。しかし、加齢した後でも、被爆者の方ががんが多く発生しました。
 
女性は、男性にくらべて、1.4倍にがんが増えました。(90%信頼区間 CI 1.1; 1.8)。
 
被爆者で、多くみられたがんの種類は、口腔、食道、胃、肺、メラノーマ以外の皮膚がん、乳がん、膀胱がん、神経系がんで、一方、被ばくの影響をうけなかったのは、膵臓がん、前立腺がん、腎臓がんでした。子どもでは、子宮がんが増える傾向がありました。PMID: 17722996 Radiat Res. 2007 Jul;168(1):1-64
 
信頼区間の説明
(90%信頼区間 CI 28%から43%)、90%の信頼区間というのは、統計学上の数値です。28%から43%に含まれる数値範囲であれば、10中9まで正解になるということを示します。
 
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

トラックバック