長崎・広島で被爆した女性における乳がん発症に与える長期的影響

被爆後の長崎・広島住民におけるコホート研究(LSS)の成績を紹介してきました。今回は、原爆に暴露した女性において、乳がん発症に与える長期的影響因子についての調査結果です。それぞれの女性が持つ被ばく関連因子、及び、被ばく以外の環境因子が、乳がんの発症にどの程度に影響したかの度合いを、疫学的に算出したものです。

このコホート集団は、広島と長崎に居住する22,200人が対象となっています。被ばく放射線以外の、生活環境因子は、1979~1981年に、女性宛てに郵送した質問表の回答により得ました。 がん発症までの追跡調査期間は、平均8.31年でした。この期間に、コホート集団女性から、乳がんが161人、発症しました。この発症は、どのような因子と関連していたかを調べました。
結果: 初潮が早く、更年期が遅い人で、乳がん発症のリスクが高まりました。 妊娠の数は、乳がん発症率に関連しませんでした。 30才前に満期出産を経験した女性は、乳がんの発症は少ない傾向となりましたが、有意差はありませんでした。
 

肥満した女性では、乳がんの発症率が上昇しました。ホルモン補充療法を受けていた人は、そうでない人の1.64倍(95%の信頼区間1.02-2.64倍)に、乳がんが出ました。
 
糖尿病のある女性の乳がんの発症率は、糖尿病の無い女性の2.06倍(95%の信頼区間1.27-3.34倍)でした。
 
乳がんの発症に影響を与える因子(初潮、閉経、肥満、ホルモン補充など)、に、被ばく放射線因子を加えて計算してみても、乳がん発症率に影響を与えませんでした。この結果から、長崎・広島の被爆者における乳がんの発症には、被ばく量より、他の上記の因子の方が影響が強いと考えられました。

Prev Med. 1997 Jan-Feb;26(1):144-53 9010910
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