広島・長崎の被爆者の成人の甲状腺がんの2007年の論文です。

今までのブログには、放射線に暴露されると、小児の甲状腺がんが、多く発症することを書きました。それでは、成人の甲状腺がんは、どの位の増加があるのでしょうか?その参考になる研究論文を紹介します。
 
今回の研究は、1970-1986年間に広島と長崎の被爆者で、甲状腺がんと診断され登録された人と、同地区に居住し甲状腺がんの無い人を、対照者として、がん発症に関連する家族歴や生活スタイルを比較したものです。1986-1988年に、質問票とインタビューから、それぞれの人から、家族歴や生活歴の情報を得ました。

甲状腺ガンは、組織学的に診断されました。 75才以下で、甲状腺がんと診断された362人と、同地区の居住者、性、年齢をあわせた甲状腺がんの無い対照者362人です。
 
甲状腺がんの発症者は、男性57名、女性305名と、女性に多く発症し、がんが診断された年齢は、30歳以下31名、30-39歳88名、40-49歳113名、50-59歳92名、60歳以上38名でした。
甲状腺がんの発症者が浴びた放射線量は、 63%が5ミリシーベルト未満のごくわずかな暴露で、5ミリシーベルト以上の暴露は、57名でした。5-49ミリシーベルトが13人(3.6%)、50-499
ミリシーベルトが14名(3,9%)、500ミリシーベルトが12人(3.3%)でした。1974年から1984年に多くの人が発症しました。対照群も、5ミリシーベルト以上の被ばく者57名が含まれています。(この放射線量は、体内に取り込まれたと計算された値です。)
 
被爆の状況は、LSS研究のデータをもちいました。統計学的検討は、多因子ロジスティック回帰を用いました。
 
すでに甲状腺腫(甲状腺が腫れている人)や、甲状腺の小結節(甲状腺に固い小塊がある)の病歴があった人では、甲状腺がんの発症が多くなりました。甲状腺腫のある人では、甲状腺がんの発症が25倍になりました。甲状腺結節のある人では、甲状腺がんの発症が5倍になりました。また、家系的にも、ガンの家族歴を持つ人では、甲状腺がんの発症が増加しました。1等身(親と兄弟)にがんがある人では、甲状腺がんは1.48倍となり、兄弟・姉妹にがんのある人では、甲状腺がんは2.7倍となり、特に姉妹にがんのある場合には、甲状腺がんは4.25倍になりました。

甲状腺がんになった人のうち、5ミリシーベルト以上を被ばくした人の群(有群)と、無い群とに分け、それぞれの群ごとに、がんの発症を比較しました。被ばく無群では、甲状腺腫があると、がん発症リスクは、26倍となりましたが、被ばくを受けた群の人では、その倍率が3.75倍なりました。がんの家系の有無については、被ばくが無い群の人では、がんの家族歴があると、がん発症は1.55倍となりましたが、被ばくを受けた群では、がんの家族歴があると、がんの発症は1.43倍となりました。
 
(訳者注;被爆者は、甲状腺腫やがん家族歴を持ち合わせなくても、甲状腺がんになる(素因が無くてもがんになる)可能性があるが、患者数が少なく統計学の計算では有意とはならない)。喫煙とアルコール飲酒は、甲状腺がんの発症のオッズ比(0.45-0.6倍)がさがりました。J Epidemiol. 2007 May;17(3):76-85. 17545694
 
訳者の感想 今回は、甲状腺がんの発症は、断然女性が多く、アルコールや喫煙は、がんの発症をあげていないようです。この解釈は、いろいろですが、解毒能力の高い人、つまり、酒も飲め、煙草をすえるような高機能な体を持ち合わせると、放射線の排除能も高いのでしょうか?但し、このコメント、根拠ありません。
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