長崎・広島被爆者コホート調査における男性の乳がんの話です。

本日、福島の事故の大きさが、レベル7という最高値に引き上げられました。今後、さらなるひどい事故が起き、放射能汚染が進んでも、7以上にはならないわけですから、皮肉な評価です。
 
7の評価は、3月15日前後ではなく、さらなる事故を想定した今だからなのか?今後、さらなる事故が起きなくても、7の汚名は、続くのか?などの疑問を感じます。本日の報道では、福島は、チェルノブイリ事故の際の放射能汚染の10分の1位と報道されていましたが、これにも驚きました。なぜ、今、引き上げが必要なのか、どういう背景が潜むのか、マスコミではあまりコメントはありませんでした。
日本のように科学技術が進んだ国の事故だから、7になったなどと、理解できない説明もありました。

チェルノブイリは、多くの小児の甲状腺がんがでました。ヨード不足地域において、ばらまかれた放射性ヨードがあっという間に(24時間以内)に、甲状腺にとりこまれてしまい、食品の汚染も相まって、子どもに内部被ばくが起き、影響が出たと言われています。しかし、論文によると、チェルノブイリ付近の土壌への汚染の程度は、何万から何千キロベクレル/1平方メートル当たりという単位でした。日本では、原発外の周辺でそうした土壌の汚染単位は聞いていないです。10倍どころの違いではないですから・・・。日本では、空にばらまかれた量が多く、空に拡散してしまったとか、条件の差が大きいのでしょうか?いづれにしろ、レベル7の評価については、専門学会の見解などを、追っていきたいと思います。
 
今回の日本の事故で、体に問題量を超える放射線がとりこまれてしまった人はいませんでした。放射能によるやけどなど直接障害は、重症度が数値で予想できますが、将来的な病気発症との関係を評価するのは難しいです。人の体質の多様性から、一定の域値の数値を出すのが困難です。
 
このところ、ずーと放射線障害の論文を紹介しています。放射線と病気の関連は、データ処理の苦労がみえます。疫学的な検討は、予想された結果と異なることや、データがばらつくことがしばしばで、著者の思惑が入ることもあります。やはり、いくつかの報告を読んで、それぞれの読み手が考える作業が必要だということでしょう。
 
放射線の過剰暴露は、がんの発症のリスクを高めますが、がんは他の因子でも発症しますので、線量に比例して、がんがおきるわけではありません。大きな単位となる1シーベルト(こんなに浴びたら大変な量)になると、さすがに用量依存性が出てきます。前回に書きましたように、女性の乳がんでは、エストロゲンに暴露されている時間が長い人に起きやすく、その因子の方が、放射線より大きく影響するわけです。
 
本日の記事の最後に紹介するのは、男性の乳がんです。男性の乳がんは、数が極めて少ないのですが、放射線量との関連がきれいに観察できたタイプのがんのようです。今回は、男性乳がんに関する論文を紹介します。生殖器に関連するめずらしいがんは、放射線との関連がでるのかもしれません。
 
男性の乳がんの発症は放射線暴露と良く相関しました。被爆者のホコート調査LSS研究に含まれる男性45 880人において、男性の乳がん発生率を評価しました。
男性の乳がんは、1958年から1998年末までに診断されました。がんの発症数は、組織的に調査されている広島・長崎の腫瘍発症集計を使用しました。LSS研究に属する被爆者では、男性の乳がんは9人に発症し、1年間に換算して10万人に1.8人の割合でした。一方、被ばくしていない集団の男性では、1年間に換算して10万人に0.5人でした。
 
暴露線量があがるとがんの発症も増加する用量反応関係も見られました。1シーベルト上昇するごとに超過する相対危険度は8となりました(95%の信頼区間0.8から48)。
 
(がんの発症数は、1シーベルト上昇するごとに8倍上積みされる。1.8倍から49倍までの範囲の数値と言えば、95%正しい答えと言える)
PMID: 15840883 J Natl Cancer Inst. 2005 Apr 20;97(8):603-5.
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

トラックバック