再度、貼ってみました。

2011/4/26(火) 午後 7:14
マイクロRNAの配列は、相補的な配列を含む標的メッセンジャーRNA(mRNA)に作用して、mRNAからアミノ酸合成(翻訳と呼ぶ)を抑制すると考えられています。マイクロRNAは、1993年、原子動物の線虫や、植物のシロイヌナズナにおいて、遺伝子調節の仕組みとして働くことが発見され、遺伝子発現の抑制にかかわっていることがわかりました。マイクロRNAの基礎知識を知りたい方は、ウキペディアを参照ください。http://ja.wikipedia.org/wiki/MiRNA
 
マイクロRNAがなぜ、臨床医学で大事になってきたかですが、マイクロRNAが、がん細胞の増殖にかかわっていることがわかってきたからです。つまり、人の遺伝子情報から、ある人のマイクロRNAの抑制作用が機能しやすい体質かどうか、すなわち、がんが発症した時に、予後を評価できるツールとして使えるかどうかが話題になっているからです。
 
今回は、肺の非小細胞がんについての、マイクロRNAのお話です。マイクロRNAの働き次第で、がんが増殖しやすい?手術後の予後が良いか?に影響を与えるようです。
 
マイクロRNAは、一連の塩基配列部分から、類似した多種の前駆体マイクロRNAが生じてきます。1種類のマイクロRNAは、何十、何百か所のメッセンジャーRNAに結合しますので、メッセンジャーRNAの転写、蛋白合成に多大に影響を与えるものと思われます。
 
塩基配列の違いにより、前駆体マイクロRNAの働きの効率が異なってきます。うまく、機能するマイクロRNA型であれば、メッセンジャーRNAへの抑制作用により、蛋白合成が進まず、がん細胞の異常な増殖活動を止める事ができます。従って、マイクロRNA塩基変異は、生体の細胞への影響は大きいものです。マイクロRNAによる細胞抑制が、しっかり、働かない人では、がん細胞が増殖しやすく、予後が悪くなるわけです。

中国のがん患者における遺伝子解析結果が、2011年、リリースされました。Am J Respir Crit Care Med. 2011 Mar 1;183(5):641-8. 以下が論文です。
 
マイクロRNAは、がん抑制の大事な遺伝子の働きのひとつとして、予後評価に使えることが期待されています。マイクロRNA(miRNA)の塩基配列に変異のある人では、非小細胞肺がん(NSCLC)の生存率が向上することを以前に報告しました。
 
今回、中国の非小細胞肺がんにおいて、マイクロRNAの塩基配列が、非小細胞肺がんNSCLC患者の予後と関連するかを調べました。中国で発症した923人の非小細胞肺がん患者の遺伝子を調べ、マイクロRNAの一連の塩基配列上に85個の遺伝子多型がみつかりました。 
 
RNA配列の特定部位(miR-30c-1 rs928508)の塩基に変異がある非小細胞肺がんの患者は、がん生存率が向上しました。AA遺伝子型にくらべ、AG/GG遺伝子の型のがん患者では、生存率が向上し、このマイクロRNA遺伝子型は、がんの進展を抑える効果がありました。特に、手術などで治療可能な初期(ステージI/II)がん患者において、rs928508多型AG/GGタイプの人は、死亡率が半分に減り、生存率が良いことがわかりました。
 
マイクロRNAの遺伝子型の違いは、非小細胞肺がんの5年生存率を予想するのに役立ちます。つまり、がんの臨床像に、遺伝子因子を加えて生存率を評価したところ、5年生存率(ROC曲線)が、0.658から0.741に上昇しました。
 
結論: プレマイクロRNAの両端領域に存在するマイクロRNA多型(恐らくrs928508の部位)を調べると、非小細胞肺がんの予後判定の精度が上がると思われる。 PMID: 20889907



マイクロRNAは、がん細胞の発育を止める働きをするという話をしました。マイクロRNAとは、メッセンジャーRNAに結合して、メッセンジャーRNAの働きを止める短いRNA物質です。つまり、メッセンジャーRNAに働き(相補的に結合する)、アミノ酸合成ができなくする遺伝子抑制です。がん細胞にとっては、増殖のための蛋白質が確保できなくなるため、不利な現象ですが、がんをもつ人間の立場になると、がん細胞が育たなくなるのですから、有利です。マイクロRNAの働き如何で、がん患者の生存率が上昇するわけです。
 
実は、マイクロRNAは、がん細胞に限らず、体の細胞のあらゆるところで働いています。遺伝子発現をとめるのが、主たる作用ですが、細胞が増殖し、機能する時に調節する物質で、生命現象には必須の物質です。
当初、短いRNA構造物が、遺伝子発現にかかわることなどは、人は、想像しませんでした。
 
しかし、近年、マイクロRNAの研究分野は、どんどん広がってきており、2011年のネーチャー1月号にも、二編のマイクロRNAの論文が載っています。ひとつは、心筋梗塞に関する論文で、もうひとつは、脳炎に関する論文です。
 
脳炎に関する論文は、実験的に、マウスに脳脊髄炎をおこす研究で、目的は、人の病気である多発性硬化症を研究するためです。
 
脳にはニューロンと呼ばれる神経細胞と、それを守るグリア細胞が存在します。グリア細胞の一部は、神経細胞ニューロンとは異なり、血液系の白血球に由来します。血液細胞のマクロファージは、肺や、腸管など、どこにでも仲間がいます。マクロファージの細胞群は、脳内では、病原体や異物処理に働いています。
 
神経難病である多発性硬化症では、脳内活性化T細胞が増加し、マイクログリアが活性化しています。脳の王様である脳細胞が死んでしまう病気ですが、動物モデルから、そうした自己細胞の破壊がなぜ、おきてしまうのかを研究しているのです。Nature medicine2011;17:64
 
本来、脳内の活性化マイクログリア細胞は、脳内の病原物質を排除する時に活躍するためにあるのです。しかし、多発性硬化症という脳脊髄の病気は、活性化マイクログリア細胞により、神経細胞のニューロンが消えてしまいます。脱髄という病的変化が起きる結果、神経細胞は消えていきます。神経細胞とその神経線維が無くなれば、もはや、頭からの指令が、体に伝わららなくなります。多発性硬化症と言う病気が知りたい方は、ウキペディァです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%9A%E7%99%BA%E6%80%A7%E7%A1%AC%E5%8C%96%E7%97%87
 
 
正常の脳や脊髄では、マイクログリア細胞がおとなしくしている状態が、脳が健康状態にあることを示し、細胞内では、マイクロRNA-124(miRNA-124)が、増加しています。正常な脳のマイクログリア細胞では、マイクロRNAの働きは高まっています。脳脊髄炎を発症しているピーク時には、マイクロRNAが減少しています。活性化したマイクログリア細胞は、MHCクラスIIや、CD45と呼ばれるアンテナ蛋白をたくさん細胞表面に表出しています。こうしたアンテナが多いと、T細胞などの炎症細胞同士が交流でき、炎症を拡大することができるのです。一方、脳では、マイクログリア124の十分量が細胞内に存在していると、転写因子の働きがおさえられ、遺伝子転写がすすみません。
 
マクロファージは、血液中の単球(白血球の1種)に由来して分化した細胞ですが、体内に異物を感知した時、活性化マクロファージとなります。そうした活性化には、C/EBP-αという主要な転写因子が働き、遺伝子活性化がおきます。こうして炎症に向かって突き進む時、マイクロRNA-124は、それを抑制しており、マクロファージの分化に働くPU.1(転写因子)の働きを抑えます。
 
マイクロRNAによるタガがはずれてしまうと、PU.1(転写因子)は、単球の遺伝子に働いて、d45、CD11b、F4/80、MHCクラスIICD86などの表面マーカーを増加させ、その結果、マクロファージは武装化(活性化)します。戦うための勢いを得たマクロファージは、異物を食らいこむ能力が高まり、異物処理役として活躍します。
 
マイクロRNA-124は、脳に存在するマイクログリアの過剰な活性化を抑え込んでいます。正常時は、脳内異物は存在せず、脳細胞のニューロンを死においやる必要はないのですが、何か脳内のバランスが壊れると、タガが外れた武装化マイクログリアが増加してきて、多発性硬化症が発症すると思われています。
 
今回の研究では、マイクロRNAが、多発性硬化症などのような自己免疫を抑え込めることが証明できました、今後は、治療手段として、利用の展望を広げたいと、著者は書いています。まだ、マウスの実験の結果のようですが・・・。
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コメント

No title

アカギ
元ケースワーカー?のコメントがこれですか。
にわかには信じがたいですが。

「もっとも、筆頭著者は自分が注目される舞台があれば、ダボハゼのように何にでも食らいついてしゃしゃり出る気満々なのでしょうがね。でも今の時点で「あの人は今」の扱いでは、お代替りしたら完全に消える運命でしょうよ。」
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