重症外傷のある被爆者の、その後のがん死に関する2002年の論文を紹介します。

現在の福島原発では、爆発などの事故は回避できているものの、放射能汚染水の海への流出は続いています。
余震も続いており、次なる重大事故の起きないことを祈るばかりです。

東京の飲料水も、一時100ベクレルを超え、突如、厚労省が、水は小児に危険であるとのおふれを出しました。これには、多くの人がびっくりました。安全と言っていたではないか?との政府への不信感が盛り上がりました。小児科学会などは、インターネットを通じて、急きょ、飲料水としてもさしつかえないとのコメントをだしました。
その言い方は、微妙な言い回しで、安全であるとは言っていませんでした。100ベクレル超えた水が安全であると保障できる人はいないのですが、専門家としてもう少し踏み込んで「与えて良い」との表現の方が、母親たちに理解しやすいです。
 
結局、この問題は、「安全とは何か?」をつきつめることになるのでしょう。微妙な判断を問う時は、専門家は方向付けをしないと、一般人は困ります。たとえ、安全基準は、人の価値観で変わっても・・・。
東京近郊に住んでいて、普段より汚染された大気環境の中で、水だけ飲まないでいても、将来どこ位の益があるのでしょうか?
 
世の中には、答えの出ない問題は、多数あるわけですが、常に問題意識を持つことが答えなのかもしれません。

昨日のテレビでも、某キャスターが、学校での放射能の安全基準がないではないかと、怒りの発言がありました。しかし、安全基準をつくれるなら、もう、できていると思います。安全基準を作るのは、極めて難しいものと思います。元々、放射線障害は、域値がない(ここからが危ないという危険域)が、設定できません。子どもの心身の発達への影響を最小限にして、最大の予防効果があがる落とし所はどこか?誰も答えを持たないと思います。
 
お母さんたちの中には、子どもを外で一切、遊ばせないとか、窓にテープでシールを貼るとする人がいるようです。少量の放射線が、人の体へ及ぼす影響は、答えがなく、放射線の健康被害は、判断のためのデータが少ないです。判断材料が少ないと、人は判断ができません。
 
発がんに関しては、予想できない運のようなものがあります。何をすると発がんしやすいかを並べることはできます。でも何をすると、がんにならないですむかを並べることは難しいです。対がん協会のだしている乳がん撲滅キャンペーンのポスターも、「検診は、乳がんになっていないことを確かめるためのもの」などを謳っていますが、これは、考え方が間違っています。こうしたものが、専門医のアドバイスを受けずに、日本中に出回ってしまうのは悲しい事です。
 
さて、このブログでは、爆心地から、1.5km離れた場所にいた被爆者における、その後の発がんなどのデータを紹介しました。1.5kmなどの数値は、恐ろしい近い数値です。そこにいた方は、ひどい外傷うけ、外傷後症候群や感染などで命を落としたと思います。しかし、重症なやけどを克服できた方はいるわけで、並はずれた生命力の強い方は生き残りました。
今回は、近距離で被爆し、放射線の直接障害を受けた人(やけどと脱毛が起きた大量被爆者)の、その後の発がんの状況です。

論文の結論は、外傷(やけど、脱毛)を受けた人で、特にその後に発がんが増えた事実はなかったということでした。チェルノブイリでも、小児の甲状腺の発がんは、爆心地よりやや離れたところで多発していました。予想とは異なり、外傷のあった人で、必ずしも、がんが増えなかった事実は、原爆を生き延びた人がとても強い人たちだったからかもしれません。
 
重症外傷のある被爆者の、その後のがん死に関する2002年の論文を紹介します。Int J Radiat Biol. 2002 Nov;78(11):1001-10
LSS研究(長崎・広島被爆者の長期的の追跡研究)からのデータです。爆心地に近く、外傷を負った人と、そうではない被爆者の、その後のがんの発症を比較した研究です。
白血病は、外傷を負った人々で発症の頻度がふえましたが、単純集計によると(他因子を考慮しない)、統計学的に白血病発症の相対危険度が上昇しました。しかし、その他の因子を加え計算し直すと、外傷があった被爆者で白血病が増えるという事実が確認できませんでした(統計学的に有意差がない)。さらに、白血病以外の固形がんやその他、良性新生物、心血管疾患、非-ガンなど)に関しても、外傷を受けた被爆者での増加は確認できませんでした。
PMID: 12456287
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