C型肝炎の女性では、閉経早期では、C型肝炎の治療効果が低下する。男性は年齢との関係はうすい。

今年早々に、肝炎の話をしました(2011年1月17日)が、女性の肝炎で、気になる論文がありましたので、紹介します。C型肝炎はなぜ、難治なのかを、考えている男性にも読んでほしいです。
 
健康診断で必ずチェックされる肝臓の数値に、AST(GOT)、ALT(GPT)、γGTPがあります。これらの数値が上昇している場合は、慢性肝炎の疑いがもたれ、精査を勧められます。特にC型肝炎ウイルスは、慢性化、肝硬変(肝線維化)、肝がんのリスクが高まるため、公費で治療が進められています。
 
急性C型肝炎を得た85%の人で、慢性化がおこります。人の免疫細胞の攻撃を逃れてC型肝炎ウイルスは生き残ります。免疫細胞はなんとかウイルスを排除しようと、果てのない戦い(炎症)を続けます。慢性感染を続けられるウイルスは、究極的に進化した生物体と言えます。免疫細胞に排除されず、生き残るからです。
 
体の中で、慢性感染が遷延すると、行きつく先は、がん化か、線維化(固くなり働けなくなる)です。この悪循環を防ぐ方法が、ペグインターフェロンとリバビリンの標準治療です。昔、慢性肝炎が多った証拠に、漢方薬には、慢性肝炎をターゲットにした(と思われる薬剤)が多数あります。当時は、慢性ウイルス感染の概念がなく、試行錯誤の治療でした。治療効果が低くとも、先がみえなくても、医療者は病気にとりくまなくてはならないのは、今も昔も同じです。当時の漢方療法には、さまざまな学派や流派がしのぎを削ったでしょう(本題からずれました)。

現在では、ペグインターフェロンとリバビリンが標準治療では、2-3型ウイルスでは、有効率が高く(ウイルスを無くせる)、1-4型ウイルスに感染では、薬の効きにくいのです。治療効果があがるのは、前者は4-5割、後者は8割です。
 
女性の肝臓の病気には、男性とは異なる特徴があります。元々、女性は感染症に抵抗性で、細菌、ウイルスなど病原体を殺す能力は高いです。C型肝炎ウイルスも同様に、男性の方がC型肝炎ウイルスによる肝炎の進行が早く、予後が悪い(肝硬変、肝がんで死にやすい)のです。女性では、元々インターフェロン産生能が良いので、それも影響するのかもしれません。しかし、女性だけで治療効果を見ると、若い女性では、治療効果が高く、一方、閉経後は治療効果が低下します。その理由は、いろいろ考察できるのですが、女性ホルモンの肝臓への保護的役割が指摘されています。今回、紹介する論文は、女性の慢性C型肝炎の治療効果と、女性ホルモンとの関連についての研究です。

女性は、閉経期になると、女性ホルモンが一気に低下します。肝臓の病気においては、女性ホルモンは、炎症を抑える方向で働いているようで、この働きが、閉経を契機に低下してしまします。この論文では、閉経後早期の女性で、血清インターロイキン-6、肝臓TNF-αが上昇し、この時期は、治療効果が低下することを指摘しました。女性ホルモンが低下すると、肝臓の線維化も進行する可能性が考えられます。炎症物質は、本来、ウイルス駆除に働くと考えられます。しかし、炎症が強いと肝細胞は壊れていきます。閉経から数年経つと、炎症性サイトカイン(インターロイキン-6、TNF-α)などは、低下していきます。しかし、いづれにしろ、閉経まもない女性のC型肝炎の治療成績が悪いようです。このような現象は、男性ではみられません。
 
以下が論文です。
肝臓の線維化は、若年女性(生殖可能年齢)にくらべると、更年期の女性では、進行が早くなります。 慢性C型肝炎の女性患者において、治療によるウイルス学的著効(SVR)との関連を調査しました。18才以上で治療歴のない肝炎患者について、肝炎の程度を評価しました。そのうちの女性について、年齢が更年期の前か後か?、ホルモン補充療法の有無、インターロイキン-6、肝臓腫瘍壊死因子(TNF)-αの血清濃度を調べました。
 
442人の女性から、データを得ることができました。治療によりウイルス学的著効のあった人たちは、若年女性では67.5%であったのに対し、閉経後の女性は46.0%と閉経後の女性で治療効果が低下しました(有意差あり P .0001)。男性全体のウイルス学的著効は51.1%でした。
 
多変量回帰分析をすると、治療が著効しにくい女性側の因子としては、閉経してまもないこと(オッズ比[OR]、8倍)、γ-グルタミルトランスフェラーゼの高値(オッズ2.165倍)、C型肝炎ウイルス遺伝子型が1または4型であること(オッズ3.861倍)でした。 閉経早期の女性では、遺伝子型1ウイルス の場合に、治療効果が低下しました(OR、3.933倍)。
 
閉経後の女性では、若年女性に比べて、肝臓の炎症が強く、線維症、脂肪肝、血清インターロイキン-6、肝臓TNF-α(P = .007)の数値が高い状態でした。
 
結論:更年期の女性で、C型慢性肝炎は治療効果が低く、肝臓の炎症が続きやすい。理由は、女性ホルモンによる炎症保護作用のためかもしれない。Gastroenterology. 2011 ;140(3):818-29
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