カビや細菌由来物質、有機物質などには、人の免疫細胞は、慢性の反応を起こすようです。

前回、私たちは、カビの胞子を日常的に吸い込んでも、呼吸器の免疫細胞は反応しない、すなわち病気にはならないというお話をしました。
 
しかし、日常的に、カビが多い職場環境、例えば酪農従事者や農業従事者(きのこ栽培者)などは、どうなのでしょうか?呼吸器にとってはあまり良い職場環境ではないかもしれません。職業上やむを得ず、特定の物質に、長期間暴露されることがありますが、私たちの呼吸器はどのような影響をうけるでしょうか?カビや細菌由来物質、有機物質などには、人の免疫細胞は、慢性の反応を起こすようです。
 
職業病はすべての人で起こるわけでではなく、加齢や個人差の問題をどこまで考慮すのかなど難しい問題があります。一方、酪農家の子どもは、乳児期に納屋に出入りすることで、アレルギー疾患を減少させる効果があります。カビや細菌由来物質は、乳期の防御免疫を発達させるのです。乳児の免疫細胞は、卵や牛乳、ダニより優先的に、カビや細菌由来物質を排除しようとして、免疫が発達するからでしょう。
 
しかし、すでに免疫が成熟した成人においては、カビや細菌由来物質は、人の免疫細胞を刺激し、慢性炎症を起こすようになるようです。今回は、環境が呼吸器に与える影響について、考えてみます。

最初に結論を言うと、酪農、農業従事者では、呼吸器の慢性の症状が多いという結果でした。毎日のように咳や痰などに悩まされているのですが、それが日常的であるために、夜にめざめは増えていませんでした。人の体は、調節能力にたけているので、夜間、呼吸器のトラブルが高まり、朝の咳や痰はでるものの、夜間は睡眠がとれる状態になっていて、慢性炎症が調節されているものと思われました。しかし、こうした状態が続くことは、望ましいことではなく、結局は、呼吸器のトラブルが多い人は、仕事を早期に引退してしまうかもしれません。
 
病気の発症を調査するような疫学データでは、健康な人が対象として残りやすく、データが実際の病気の影響より良い結果となる可能性が指摘されています。いずれにしろ、マスクなどで注意して、作業をしてほしいです。

以下が論文です
干し草、わら、家畜動物への餌やりなどの作業は、呼吸器症状や肺機能にどのような影響を与えるのでしょうか? 1993-1994年に、酪農や農業従事者を募集し、追跡集団としました。医師らは、この集団の人々の呼吸器症状を、長期に追跡していきました。酪農・農業作業者に加え、事務職従事者を対照群として3群の観察グループとして、各群の呼吸器症状を比較しました。喫煙者(元喫煙を含む)酪農家28%、農業52%、対照47%でした。

肺機能は、強制肺活量(FVC、最大に吸って、最大に吐き出す検査、いわゆる肺活量),
1秒率は、
(FEV(1)と略される肺機能の測定法のひとつで、1秒間に最大吐き出せる空気の量を測り、全体の肺活量のどの程度が1秒以内に、吐き出せるかを測る。これが低下すると、気管支が狭くなっていることがわかる。ヒューヒューしたり、喘鳴が起きたりして喘息に近い病態となっている。

1993-1994年以後、死亡や転居なので、最初の集団(母集団)から若干の人で追跡ができず、2006年、呼吸器の経過を評価することのできた人数は、次のようでした。母集団の82.6%にあたる酪農家の人219人、集団の62.5%にあたる酪農でない農業労働者130人、母集団の66.4%にあたる事務職の99人でした。
 
それぞれの3群の人々に、アンケート回答、酸素測定、肺活量測定などを行い、3群の集団の人々の呼吸機能がどのように変化したかを比較しました。医師から喘息と言われた人は、酪農家7.0% 農業 3.9%、対照5.15%でした。毎朝、咳が出る人は、酪農家10.8%、 農業9.1% 対照5.1%でした。毎朝痰が出る人は、酪農家13.6% 農業13.6% 対照4.0%でした。咳で夜に起きてしまうことがあると答えた人は、酪農家11.8% 農業9.2% 対照 15.5%でした。

酪農家の人々では、コントロール(事務職)に比べて、朝の痰は、4.27倍(95%のCI 1.41-12.95)に増えており、農業従事者では、3.59倍(95%のCI 1.16-11.10)に増加していました。 家畜の餌やり作業者は、喘鳴(p = 0.01)と、朝の痰(p = 0.04)が増加していました; 干し草作業者は、喘鳴の発症する率が増加しました(p = 0.008)。対象集団の人々の喫煙、年齢、慎重、性、標高、酪農の有無を調整して、検討しました。
 
干し草を取り扱う期間が長くなると、肺機能低下がみられました。  農業労働者でも干し草、わら、動物の餌やりは、気管支症状と関係しましたが、1秒率の低下などの肺機能の低下は、家畜の世話作業と関係していました。家畜に餌やりをすると、粉末や穀類を吸い込む量が増加し、その結果、喘鳴や喘息が増えるとの推定されました。MID:21030452 Eur Respir J. 2011 Apr;37(4):767-74. 
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