最新がん遺伝子の話 マイクロRNAは、標的メッセンジャーRNAに作用して、蛋白合成を抑制するので、この働きの良い人では、がんの予後が良いです。

マイクロRNAの配列は、相補的な配列を含む標的メッセンジャーRNA(mRNA)に作用して、mRNAからアミノ酸合成(翻訳と呼ぶ)を抑制すると考えられています。マイクロRNAは、1993年、原子動物の線虫や、植物のシロイヌナズナにおいて、遺伝子調節の仕組みとして働くことが発見され、遺伝子発現の抑制にかかわっていることがわかりました。マイクロRNAの基礎知識を知りたい方は、ウキペディアを参照ください。http://ja.wikipedia.org/wiki/MiRNA
 
マイクロRNAがなぜ、臨床医学で大事になってきたかですが、マイクロRNAが、がん細胞の増殖にかかわっていることがわかってきたからです。つまり、人の遺伝子情報から、ある人のマイクロRNAの抑制作用が機能しやすい体質かどうか、すなわち、がんが発症した時に、予後を評価できるツールとして使えるかどうかが話題になっているからです。
 
今回は、肺の非小細胞がんについての、マイクロRNAのお話です。マイクロRNAの働き次第で、がんが増殖しやすい?手術後の予後が良いか?に影響を与えるようです。
 
マイクロRNAは、一連の塩基配列部分から、類似した多種の前駆体マイクロRNAが生じてきます。1種類のマイクロRNAは、何十、何百か所のメッセンジャーRNAに結合しますので、メッセンジャーRNAの転写、蛋白合成に多大に影響を与えるものと思われます。
 
塩基配列の違いにより、前駆体マイクロRNAの働きの効率が異なってきます。うまく、機能するマイクロRNA型であれば、メッセンジャーRNAへの抑制作用により、蛋白合成が進まず、がん細胞の異常な増殖活動を止める事ができます。従って、マイクロRNA塩基変異は、生体の細胞への影響は大きいものです。マイクロRNAによる細胞抑制が、しっかり、働かない人では、がん細胞が増殖しやすく、予後が悪くなるわけです。

中国のがん患者における遺伝子解析結果が、2011年、リリースされました。Am J Respir Crit Care Med. 2011 Mar 1;183(5):641-8. 以下が論文です。
 
マイクロRNAは、がん抑制の大事な遺伝子の働きのひとつとして、予後評価に使えることが期待されています。マイクロRNA(miRNA)の塩基配列に変異のある人では、非小細胞肺がん(NSCLC)の生存率が向上することを以前に報告しました。
 
今回、中国の非小細胞肺がんにおいて、マイクロRNAの塩基配列が、非小細胞肺がんNSCLC患者の予後と関連するかを調べました。中国で発症した923人の非小細胞肺がん患者の遺伝子を調べ、マイクロRNAの一連の塩基配列上に85個の遺伝子多型がみつかりました。 
 
RNA配列の特定部位(miR-30c-1 rs928508)の塩基に変異がある非小細胞肺がんの患者は、がん生存率が向上しました。AA遺伝子型にくらべ、AG/GG遺伝子の型のがん患者では、生存率が向上し、このマイクロRNA遺伝子型は、がんの進展を抑える効果がありました。特に、手術などで治療可能な初期(ステージI/II)がん患者において、rs928508多型AG/GGタイプの人は、死亡率が半分に減り、生存率が良いことがわかりました。
 
マイクロRNAの遺伝子型の違いは、非小細胞肺がんの5年生存率を予想するのに役立ちます。つまり、がんの臨床像に、遺伝子因子を加えて生存率を評価したところ、5年生存率(ROC曲線)が、0.658から0.741に上昇しました。
 
結論: プレマイクロRNAの両端領域に存在するマイクロRNA多型(恐らくrs928508の部位)を調べると、非小細胞肺がんの予後判定の精度が上がると思われる。 PMID: 20889907
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