マイクロRNAは、いろいろな病気において、遺伝子からの翻訳を止めています。新たな治療への挑戦

マイクロRNAは、がん細胞の発育を止める働きをするという話をしました。マイクロRNAとは、メッセンジャーRNAに結合して、メッセンジャーRNAの働きを止める短いRNA物質です。つまり、メッセンジャーRNAに働き(相補的に結合する)、アミノ酸合成ができなくする遺伝子抑制です。がん細胞にとっては、増殖のための蛋白質が確保できなくなるため、不利な現象ですが、がんをもつ人間の立場になると、がん細胞が育たなくなるのですから、有利です。マイクロRNAの働き如何で、がん患者の生存率が上昇するわけです。
 
実は、マイクロRNAは、がん細胞に限らず、体の細胞のあらゆるところで働いています。遺伝子発現をとめるのが、主たる作用ですが、細胞が増殖し、機能する時に調節する物質で、生命現象には必須の物質です。
当初、短いRNA構造物が、遺伝子発現にかかわることなどは、人は、想像しませんでした。
 
しかし、近年、マイクロRNAの研究分野は、どんどん広がってきており、2011年のネーチャー1月号にも、二編のマイクロRNAの論文が載っています。ひとつは、心筋梗塞に関する論文で、もうひとつは、脳炎に関する論文です。
 
脳炎に関する論文は、実験的に、マウスに脳脊髄炎をおこす研究で、目的は、人の病気である多発性硬化症を研究するためです。
 
脳にはニューロンと呼ばれる神経細胞と、それを守るグリア細胞が存在します。グリア細胞の一部は、神経細胞ニューロンとは異なり、血液系の白血球に由来します。血液細胞のマクロファージは、肺や、腸管など、どこにでも仲間がいます。マクロファージの細胞群は、脳内では、病原体や異物処理に働いています。
 
神経難病である多発性硬化症では、脳内活性化T細胞が増加し、マイクログリアが活性化しています。脳の王様である脳細胞が死んでしまう病気ですが、動物モデルから、そうした自己細胞の破壊がなぜ、おきてしまうのかを研究しているのです。Nature medicine2011;17:64
 
本来、脳内の活性化マイクログリア細胞は、脳内の病原物質を排除する時に活躍するためにあるのです。しかし、多発性硬化症という脳脊髄の病気は、活性化マイクログリア細胞により、神経細胞のニューロンが消えてしまいます。脱髄という病的変化が起きる結果、神経細胞は消えていきます。神経細胞とその神経線維が無くなれば、もはや、頭からの指令が、体に伝わららなくなります。多発性硬化症と言う病気が知りたい方は、ウキペディァです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%9A%E7%99%BA%E6%80%A7%E7%A1%AC%E5%8C%96%E7%97%87
 
 
正常の脳や脊髄では、マイクログリア細胞がおとなしくしている状態が、脳が健康状態にあることを示し、細胞内では、マイクロRNA-124(miRNA-124)が、増加しています。正常な脳のマイクログリア細胞では、マイクロRNAの働きは高まっています。脳脊髄炎を発症しているピーク時には、マイクロRNAが減少しています。活性化したマイクログリア細胞は、MHCクラスIIや、CD45と呼ばれるアンテナ蛋白をたくさん細胞表面に表出しています。こうしたアンテナが多いと、T細胞などの炎症細胞同士が交流でき、炎症を拡大することができるのです。一方、脳では、マイクログリア124の十分量が細胞内に存在していると、転写因子の働きがおさえられ、遺伝子転写がすすみません。
 
マクロファージは、血液中の単球(白血球の1種)に由来して分化した細胞ですが、体内に異物を感知した時、活性化マクロファージとなります。そうした活性化には、C/EBP-αという主要な転写因子が働き、遺伝子活性化がおきます。こうして炎症に向かって突き進む時、マイクロRNA-124は、それを抑制しており、マクロファージの分化に働くPU.1(転写因子)の働きを抑えます。
 
マイクロRNAによるタガがはずれてしまうと、PU.1(転写因子)は、単球の遺伝子に働いて、d45、CD11b、F4/80、MHCクラスIICD86などの表面マーカーを増加させ、その結果、マクロファージは武装化(活性化)します。戦うための勢いを得たマクロファージは、異物を食らいこむ能力が高まり、異物処理役として活躍します。
 
マイクロRNA-124は、脳に存在するマイクログリアの過剰な活性化を抑え込んでいます。正常時は、脳内異物は存在せず、脳細胞のニューロンを死においやる必要はないのですが、何か脳内のバランスが壊れると、タガが外れた武装化マイクログリアが増加してきて、多発性硬化症が発症すると思われています。
 
今回の研究では、マイクロRNAが、多発性硬化症などのような自己免疫を抑え込めることが証明できました、今後は、治療手段として、利用の展望を広げたいと、著者は書いています。まだ、マウスの実験の結果のようですが・・・。
 
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

トラックバック